渦巻くコロナ禍であらためて【背守り】練習帖 のページを開いてみた。
まさに今の不安な揺れる気持ちを受け止めてくれる、背守り。
恐る恐る、人々がやってきたように、紙にプツプツと穴をあけて、糸を渡していく。
神妙な面持ちで穴をつなぐ糸を目で追い針を進めていくと、ふと自分の視野が、誰かほかの人のそれと入れ替わるような、かすかな痙攣のような感覚を覚える。
そうだ、これはかつて背守りを縫ってきたたくさんの人たちの眼差し、そのものなんだ。
紙にこすれる糸の音を聴きながら、絡んだり、ほどいたり、進んではやりなおしたりしていると、母の母の、そのまた昔のたくさんの母たちに囲まれているような、茶飲み話の机のはしっこにちょこんと座って「大丈夫、大丈夫」となだめられたり、肩にあたたかい手をかけてもらっているような気持ちになる。
息が整い、少し落ち着いて明日を迎えることができるような気がした。
いまこそ、背守り。
もっと気軽に、まずは何も考えずに、ただ縫ってみる。
そこから、
手仕事や縫いものが好きな人は、さらに深く「たのしく作る」ことへ、
細かい作業が苦手な人は、「楽して縫う」近道を探り、
目印としてのその機能性が気に入った人は、「さらなる便利さ」を、
図案に使われた形の意味や背景が気になる人は、さらに「背守りの歴史と図案に隠された願いや意味を知る」森の奥へ・・・
「背守り」を入り口に、その小さな扉を開いた人たちが各々自由にその先へと軽やかに進んでいけるようなものが欲しい。
いま「扉」と言ったけれど、開きっぱなしの「門」の方が向こうが見えて進んでいきやすい。道に2本の枝を差しただけの、門。
いま縫えるほんの少しの図案と、針と糸などの基本道具だけあればいい。
【背守り】練習帖にあるような、くわしい解説はなしで。
お試し、試食品のようなもの。まずは一口食べてみるだけの、味見のためにお匙の上に乗せたような姿。はいよっ、とご飯粒のついた手で渡す塩にぎりのような。お試し背守り。
でも時間がないから、なによりも早く。素のままでも「今」の気持ちごと届けられるよう、時間をかけてあれこれ練ったり凝ったりしないで・・・
そんなこんなで、あれよあれよと新アイテム『ちょこっと背守り』の準備は始まりました。
もうすぐ、エクスプランテのネットショップから皆さんにお届けできます。
エクスプランテ・スタッフ一同