この夏、エクスプランテであたらしく販売をはじめた「あんどんキット」は、美しい木枠を組み立てて、お好きなもんきりの切り紙を貼って「もんきり行灯づくり」がご自宅で楽しめる小さなキットです。
あんどんキットの木枠のデザインと制作は、静岡県浜松市の 株式会社フジセン の伊藤英二さんが担当して下さっています。
さっそく伊藤さんにお仕事のことや「あんどんキット」のお話を伺わせていただきました。
■株式会社フジセンさんでは、いつもどんなものを作っていらっしゃいますか。
伊藤さん:
寺社仏閣に奉納される木札や絵馬の製造が(聞き馴染みがないかもしれませんが授与品の製造として括られています)主な業務です。
■会社のある静岡県浜松市はどんなところですか?
素敵な事務所
伊藤さん:
浜松は1ヶ月ほどの日照りが続き、会社の畑やバナナの木も枯れかけていたところなんとなく今日から雨が降りそうな感じです。風が涼しくなってきましたね
浜松はどんな街なんでしょうね。あんまり自分の街という括りで考えたことがないんです。家族がいるところみたいな感じ。
よくある紹介のされ方だとSUZUKIやYAMAHA、KAWAI といった有名な企業があるということで製造業の街といった印象でしょうか、あと製材業と繊維産業で栄えた街。
史上最高気温の街。(*浜松市では2020/8/17に国内最高気温に並ぶ41.1℃を観測)
伊藤さん:
幼い頃を思い出すと、自転車で海に釣りに行ったり、山の方の川に泳ぎに行ったり、浜名湖があったり、自転車での行動範囲内に自然と遊べるところがあったからそんなに遊ぶことに不自由はしなかったなという印象でしょうか、大人になってから浜松であそぶということがないので、街というイメージではない気がします。
父が材木屋で母が織物屋の娘だったからなんとなく浜松という街の背景みたいなものは感じていた様な気がするんですが、、、
暮らしやすい街とも思って無いし、暮らしづらいとも思って無いし、うなぎはおいしい(近くの「あおいや」が)、観光地ではない、空は広いかな
そういえば、浜松で働きだして最初におもったのは空が広いなーということと、朝のコーヒーが美味しいなーみたいなことだったように思います。
■木の良いところ、木をつかっていくこと、日本の木を守ること、木を育てることなどについて、宜しければお話を伺わせてください。
伊藤さん:
木のいいところは、、、周りに材木という素材がありすぎて客観的に捉えられて無いかもしれないですが、視覚、嗅覚、触覚で人それぞれ何か感じられるものがあるというところでしょうか(でもそれはどんな素材でも同じか)
僕は木工所で働いていて、木材を加工して木製品を製造するという仕事を主にしています。
その仕事の中で素材としての木と向き合います。
工場の中 古い機械の存在感がすごい!
伊藤さん:
今年の1月に エクスプランテ 下中さん御一行と浜松をまわって丸太が川下におりて製材されて、材木という素材になるところまでをめぐりました。
その中での登場人物が自伐林家の鈴木将之さん、製材工場されている梅林大介さん、そして加工してるうちの会社です。
その道中でも感じていたのですが、山→製材→加工→消費者の様に、素材が解体されていく流れの中で、ものを見る視点ってそれぞれだなーということを感じていました(というかいつもそう感じている)
多分考えていることもそれぞれ違って、でも見ているそれは同じ木という存在なんですが、、、
木が使われるということはいろんな人がそれぞれの役割の中で山や森と関わっていることのように思います。
天竜の豊かな杉やヒノキの森
伊藤さん:
僕らがしてる仕事の中で森を守ることという考え方はあんまりしてないかもしれないです
でも梅林さんと話をすると製材することで木が消費されて森が守られていくんだと梅林さんは言います
将之さんに話しを聞くと、自分の家は代々山を管理して、枝打ちを繰り返したその歴史の中で引き継がれてきた自分の山を育てているみたいなことを言います
彼らの話を聞くと森というテーマで何か答えるのはなんとなく恐縮だなーという感じがして
伊藤さん:
その中で僕が感じるのは自分の仕事もそのサイクルの中に入っているんだということです。
木ってバトンみたいな感じで渡されていってる様な気がします、山から行灯を手にするその人に。
ただそのサイクルの中の中継地点としての僕なのかも、エクスプランテさんもきっと中継ですよね。
■今回一緒に作って下さったあんどんキットの木枠の素材である「天竜ヒノキ」について、お話伺わせてください。
伊藤さん:
これも素材的な内容やバックグラウンドの回答では無いんですが(それは自伐林家の方のほうが正確に伝わる気がします。)
大人になって浜松に帰ってきて今の仕事をするまで天竜ひのきや天竜杉という存在にあまり馴染みがなく(父の会社で扱っている材木のほとんどは外材だったためなのかもしれない)はずかしながら、自分が住んでいる周りが森に囲まれていてその中で暮らしているという意識さえあまりなかったです
浜松の地材を扱う様になって山で働かれている方、その山から出てきた丸太を製材している方と知り合って天竜ひのきという存在の輪郭が見えてきた感じです
昔植林があったり山に住んでいた方々の営みがあって今の森ができていて、その意志(みたいなもの)を継いで山が管理されていて今の仕事(僕も含めて)につながってるんだと思っています。
■あんどんキットを作るとき、特に気をつかっていらっしゃるところはどこですか?
キットを購入された方に、どんなふうに使ってほしいですか?
伊藤さん:
製造に関してでは無いんですが、形を決めるときに何となくすんなりくる大きさを気にして考えてました。
作る時は割とそんな気にせずいつも通り作ってます、強いて言えば早く正確に作ることくらいかな、効率とか。
どんな風に使って欲しいという要望はとくにないですねー
それぞれがそれぞれの場所でみたいな
ただ組み立てのときに無垢の木を触って匂いを嗅いでもらえると思うのでそれが嬉しいです。
■フジセンさんでこれから作ってみたいもの、また、あたらしくチャレンジしてみたいことはありますか?
伊藤さん:
国産材の絵馬や木札が広がればいいなと思っています、
それぞれの神社の地域の木材を使って欲しいです。
絵馬や木札に使われている材料はほとんどがスプルースという北米産の針葉樹です。僕らは国産のひのきも扱いますが、割と少なめです。
行灯キットなんかもそうだけど、木という素材を使って、生活の中のちょっとした部分とか、季節とか、自分の雰囲気?感情?の様なものに添える様なものができればいいなと思っています。
お話してくださったのは:株式会社フジセン 伊藤さん
写真:株式会社フジセン 伊藤さん/エクスプランテ 下中
(「読者の皆さまからのお便り」より、山下さんのお写真もお借りしました)
「あんどんキット」
文中にお借りした工場のお写真の中には、伊藤さんが「今朝撮った写真です」と送って下さったものも!
伊藤さん、あちらこちらに投げた質問のボールを一つ一つ丁寧に返してくださって、本当にありがとうございました。
森からやってきた木のバトン。
エクスプランテという中継地点として、このバトンを両手で受け取って次へと手渡していけるといいなと思います。
伊藤さんたち浜松の株式会社フジセンの皆さんと一緒に作っている「あんどんキット」。
これからの季節は、9月9日の菊の節句「重陽」のお部屋飾りや、9月第3月曜日(今年は9月21日)の敬老の日の贈り物にもおすすめです。
また、わたしたちの暮らしをやさしく照らしてくれる「もんきり行灯」は、秋の月夜の灯りとして、十五夜(2020年10月1日)や十三夜(2020年10月29日)にもぜひどうぞ。
「あんどんキット」は、現在エクスプランテのネットショップでお取り扱い中です。
『あんどんキット』と、夏~初秋のもんきりが作れるセット
https://explantae.theshop.jp/items/32159580
『あんどんキット』と、もんきり豆シリーズ書籍のセット
https://explantae.theshop.jp/items/31860727