うちわを縫う「背守りうちわ」

※2022年7月14日、内容を修正して再掲載しています。

切り紙と日本のかたちを、四季折々の日々の暮しの中でたのしむアイデアをご紹介している「暮らしでたのしむ」。

背守りを「うちわ」に縫ってみます!

実はこれ、背守りで「麻の葉」の図案を何度か丸カードに試し縫いをしていたら、裏表を気にせず縫えそうな縫い順が見つかったので、丸カードに縫えるなら「うちわ」にも縫えるのでは?という、単純な思いつきでヒョッコリはじめたチャレンジです。

「そばちょこうちわ」よりも、ちょっと上級編?
背守りが初めての方は、私と同じく本番のうちわの前に、まずは丸カードなどで図案の縫い方を何度か練習してから「うちわ縫い」に挑戦した方が、ちょっとした加減や勝手がわかって縫いやすいと思います。

「うちわを縫う」なんてはじめての経験なのでなんだか緊張しますが、果たして上手くいくのでしょうか?

参考リンク:背守りとは

 

思い立ったら、縫うしかない

使ったもの
・型紙を仮止めするマスキングテープ
画びょうえんぴつはさみ
・好きな色の(今回は手持ちの刺しゅう用の糸と針を使ってみました)
『夏季限定【紋切り型】素材キット「うちわ」』
『ちょこっと背守り』、あるいは『【背守り】練習帖』から、お好きな背守りの図案、薄紙、下敷き用のダンボール。

図案を写します

『ちょこっと背守り』『【背守り】練習帖』から好きな図案を選んで、薄紙に図案を写します。(この「麻の葉」文様は、ちょうどどちらにも掲載されています)

今回は文様が目立つように『ちょこっと背守り』の図案を2倍くらいに拡大してから薄紙に写してみましたが、そのままの大きさでも可愛いかもしれませんね。

丸カードなどで何度か試し縫いをしたら、次は「うちわ」のどの位置に背守りを縫うか決めたいのですが、うちわには「ホネ」があるので、縫える位置を探すのがちょっと大変です。

透かしてホネをよける

ホネの部分に図案の縫い目がこないように、図案を重ねたうちわを光で透かし、慎重にホネを避けつつ針穴を確認しながら図案の位置を探していきます。

まるでパズルか、知恵の輪か。
こちらを避ければあちらが重なり、図案の針目の数の分だけ難易度が上がります。

はじめて縫ううちわ、もっとシンプルな図案にすればよかったですね。
麻の葉は幾何学的なかたちなので、針穴の正確な位置が大切になってきますが、もしかしたらちょっとくらい針穴の位置を動かしても問題ない図案もあるかもしれません。

あれやこれやと考えながら少しずらしては確認、ずらしては再確認しながらのこの作業が、背守りうちわの一番の難所。ここが頑張りどころ。

画びょうで穴をあける

いい塩梅に縫えそうな配置が見つかったら、せっかくの好位置を見失わないよう図案をマスキングテープで止めます。
机を傷付けないようダンボールを下敷き代わりに置いて、その上で、うちわに図案の針目の穴を画びょうで開けていきます。
画びょうがホネに当たらないよう、そーっと場所を探りながら。

針目の穴をあけたら、好きな色の糸で図案のとおりに縫っていきます。
糸は太めの方が文様がハッキリして良いのでは?と想像して、25番の刺しゅう糸を3本どりで縫ってみました。

『ちょこっと背守り』や『【背守り】練習帖』に入っている針(上)は、3本どりの刺しゅう糸を縫うのは難しいので、手持ちの刺しゅう針(下)を使います。

いざ、初縫い

恐る恐る・・・おぉ縫えてます、縫えてます、うちわが縫えています。

麻の葉の中心の針目のように何度か針を通すところは、前に通している糸を針が割ってしまわないように、糸が均一に張るように、緩まぬよう引き過ぎぬよう気を付けました。

ひとつの穴に糸が重なってくると、どんどんきつくなってきますが、そうなったら無理に針を通そうとしないで、もう一度画びょうを穴にそっと通したりして、だましだまし穴を広げながら紙を破らないようゆっくり縫うように気を付けました。

糸の縫いはじめと縫い終わりは、かた結びで止めます。
穴をすり抜けないよう、念のため何度か結んでコブを大きめにしておきます。

ひとつ縫い終わったら一息ついて、糸の色を変えてもう少し麻の葉を縫ってみます。
先ほど使った図案とうちわのホネを、また光で透かして位置を決め、画びょうでプツプツと針穴をあけて・・・

うちわの上に文様が増えると、さらに楽しくなってきました。
麻の葉は同じ針穴でも、縫い終わった図案と縫いかけとで、かたちの印象ががらりと変わるのも、当たり前だけれどおもしろい。

デザインがどんどん展開していく、先人の凄み!

先日の麻の葉の「背守りマスク」を見たスタッフ長田が、皆さんの参考になればとエクスプランテのアーカイブからこんな興味深いかたちを教えてくれました。

やぶれ麻の葉

右手の文様は「やぶれ麻の葉」という名前だそうです。
こんな文様があったんですね!
美しい三角形が規則正しくきっちりと無限に敷き詰められた「完全無欠」の麻の葉文様から、ところどころ不規則にテンポを変えて。誰かがこっそりいたずらで三角を抜いて持って行ってしまったような、その姿。

まるで虫食いのようなその様子を「やぶれ」と称して面白がる。
まさに「型を破って」新しい文様を生み出し続けてきた、先人たちの展開力。
麻の葉は、すくすくと元気に育ちますようにとの願いも込めて使われてきたと聞きますが、この「やぶれ麻の葉」は、いったいどんな拍子で生まれて、どんな人が喜んで使ったのでしょう?
想像が広がりますね。

そして、背守りうちわが?

あれこれと文様に思いを馳せつつ、さらにいくつか麻の葉を縫い足して、背守りうちわがなんとか完成しました。
すっかり「やぶれ」文様に感化され、縫い途中の図案も組み合わせたりした「背守りうちわ」になりました。

もっともっと麻の葉を縫い足しても面白かったかな?
糸をガラっと変えてみるのも、いいかもしれない。
背守りと、もんきりの切り紙を組み合わせたら、どんなうちわになるかな?
今回はおっかなびっくり、緊張して行儀よく縫い過ぎたから、もっと「やぶれ」気質なうちわも作ってみたい!
紙に開けたちいさな穴と穴を集中して縫っていたら、突然、虫喰いの落ち葉を糸で縫ってみたくなってきたりして・・・

作り始めは「麻の葉は幾何学的なかたちなので、針穴の正確な位置が大切になってきますが…」なんて言っていましたが、それもただの自分の決めつけだったのかもと思い始めました。
麻の葉の針穴の位置をあえてズラすことで、もっと面白い偶然の模様が出来ることだってあるんじゃないか。あぁ、もっと考え方をやわらかくしていきたい。

あたらしいことをやってみると、わくわくとイメージが広がって、アタマのてっぺんに小窓が開いたような気分です。

さてさて、おっかなびっくりの今回の「夏のうちわ自由工作」に使用したのは・・・

気軽に背守りを試せる、お得なクーポンつきのちいさな背守りのスターターキット
『ちょこっと背守り』
https://explantae.theshop.jp/items/30155229

または、

著者の背守りのフィールドワークの記録と共に、たくさんの図案が収録されたロングセラー書籍
『【背守り】練習帖』
https://explantae.theshop.jp/items/4905765



そして「夏のうちわで自由工作」に欠かせないのが
2本の竹製無地うちわが入って、切り紙もんきりうちわをすぐに作れる
夏季限定【紋切り型】素材キット『うちわ』
https://explantae.theshop.jp/items/4905763


今回挑戦した「うちわを縫う」体験は、まるで団扇職人見習いになれたような、とても新鮮な感覚でした。
針仕事や刺しゅうがお好きな方だったら、一度縫ったらもうどんどん縫いたくなってしまうのではないでしょうか。

そしてもしも皆さんのなかで
「こんな背守りうちわが出来てしまいました」
「思い切ってこんなものにまで背守り縫ってみました」
なんてことがありましたら
よろしければコッソリ教えてください。