【ワークショップご報告】旧暦カフェ 第16回「七草 節分」 東京 南青山 折形デザイン研究所

旧暦の時間軸で日本の年中行事を見つめなおす体験型ワークショップ、「旧暦カフェ」。

2020年2月1日(土)に東京・南青山 の折形デザイン研究所でひらいた第16回旧暦カフェ・ワークショップ「七草 節分」の様子が届きましたので、よろしければどうぞご覧ください。

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旧暦カフェワークショップ「七草 節分」

まずは、旧暦の12月〜2月にかけて約2ヶ月様々な行事が繰り返された長〜いお正月について、巻物で見てみましょう。
今年は七草(1/30)の三日後が節分(2/3)ですが、年によっては元旦前に節分があったり、、、
いろいろとややこしい〜。

これが一般的な「七草」です。
せり なずな ごぎょう(ハハコグサ) はこべら(ハコベ) ほとけのざ(コオニタビラコ) すずな(蕪) すずしろ(大根)

でも実は、、、
必ずしもそうでない。「七草」は「七種(ななくさ)」
「のり、ひじき、人参、ふのり、わかめ、ごぼう、するめ」なんて地方もあるそう。
そう!その季節、その場所で得られるもの。それが大切。
「買う」のはすっぱりやめて、身近で探してみよう。

ということで、今回は下中の住む大田区で前日の1/31に採集を試みました
自転車で走り回りながら、心当たりを目を皿のようにして探します。
不思議なもので、ひとつ見つかると魔法が解けたように次から次へと見つかります。

ますはハコベ。陽だまりにふんわりと柔らかく伸びていて思いもかけずたくさん収穫。

他には
ヨモギ(ちょっと早いかな)
タネツケバナ(ナズナの代わり!)
タンポポ(まだロゼットでした)
ハハコグサ(ほんのちょっと)
カラスノエンドウ(フェンスの下に。まだ柔らかい)
ホトケノザ(コオニタビラコではなくピンクの花が咲く方の)

これでなんとか七種です。

こんな風に、毎年決まった日に野に出て若菜を探すことで、
その年の気候や自然の変化を知ることができる。
「あら、今年は〇〇が早いのね、春が早いかな。」
「今年は〇〇が少ないな。どうしたのかな」というように。
行事植物にはそんな効用もあるかもしれない。

お粥は佐藤千香子さん(右)と山口美登利さん(左)の担当。
美登利さんは記録も担当(ありがとー)山口信博さん(中)も鍋をのぞきこんで「おいしそ〜」

♪七草なずな 唐土とうどの鳥と 日本の鳥と 渡らぬ先に、、、。

~七草唄~


わらべ唄を保育に取り入れている篠崎純子さんたち「保母さん3人娘」の音頭取りで、七草唄を歌いながら若菜を刻みます。いい香り!
ガンガン大きな音を立てることが、この行事の肝。
大きな音が出るようにまな板の下には桶を置いて、みんなも竹やすりこぎ、しゃもじなどではやします。
「唐土の鳥」の謎にも迫ります。中国の人日に現れる怪鳥?それともコロナウイルス?
古代中国の青い服と青い旗で春を迎えに行く「迎春」の行列にも思いを馳せます。

美登利さんが注文してくれたつきたての丸餅もこんがり焼いて、美味しい七草粥ができました。

ここで、いつもの「行事の食」担当の佐藤千香子さんからのメモ

佐藤千佳子さんメモ
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七草粥
・玄米に近い五分つき米、粟、煎り大豆、小豆、を粥に仕立て、焼き丸餅と叩いた若菜を合わせました。
・小豆は渋抜きをせず、また若菜も生のまま用いてなるべく丸ごとの栄養、味わいを取り込むようにしました。
・塩分は加えずとも食感の違いで美味しく食べられる工夫をしましたが (焼き餅を入れる、大豆を炒る)こうしたことも本来の形に近いのではないかと感じます。
・七草粥が今でも年中行事としてかなりポピュラーであることの理由は、 正月疲れをした胃を休めるきっかけとして有効だと、人々に実感があるためと考えられます。
その真意を取り違えて、七草天ぷらや七草ホットケーキになってしまわないよう繋いでいきたいものです。佐藤


若菜はほとんど生。それをとろーりとしたお粥がコーティングして実に香り高い。
小豆も甘く煮る時は雑味を取るために茹でこぼしてアクを取るけれど、小豆の味を味わうためにあえて茹でこぼさず。
煎り大豆も香ばしい。

おかゆを食べる前に、節分の「ヤイカガシ」も作ります。

材料はトベラ(なんと、節分に扉にさすので、扉→トベラの名前がついたのです!)
ヒイラギ(チクチク痛いー)
干大根(自分で作りました)
鰯の丸干し、唐辛子、かやの実、麻の緒(麻の繊維、神事に使います。秩父の荒物屋でゲット)
魚のヒレ(ホウボウ、ヒラマサ。食べたものを干してとっておきました)
豆殻(これが、なかなか苦戦。昔は捨てずに取っておいてかまどの焚き付けにしたのでしょう。でも今はみんな捨てているらしく、、、やっと丹波篠山から送ってもらいました。黒豆入りでした!わーい。かつては何も捨てずに使い切っていた生活があったのだな〜)

トベラ、ヒイラギ、豆殻。ともに燃やすとバチバチと大きな音をするものばかり。
かまどや囲炉裏など暮らしの中に生火があったからこそ選ばれた植物です。

集めた材料を使って、思い思いの「ヤイカガシ」を制作。
「ヤイカガシ」は「焼きがし」つまりは「火」と「臭い」が大切なポイント。
臭くて、痛くて、燃やすと大きな音がする、赤いもの、、など、鬼や魔が嫌うもの満載です。
門のところに掲げておいて、一年中そのままにしておきます。

竹をなたで割って挟みました。
太いの細いの、竹はなんてお役立ちもの!
里山はそんな素材の宝庫です。

さあ、大きな声で邪気を払いましょう!

♪七草なずな 唐土の鳥と 日本の鳥と 渡らぬ先に、、、。
♪お豆を煎りましょ。がらがらがら

実は動画でこの歌もお知らせしようかと思ったのですが、ちょっと失敗。
でも、旧暦カフェ以来、時々頭の中で響いてる気がします。
ああ、なんだかこれもいいなと思いました。
私たちなんでも記録しようとするけど、それも病ですね。

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ワークショップを終えて

節分当日。近くの神社の前を通って愕然。
看板が出ていて、
「諸般の事情により節分の行事は中止します。」と。
え~っ!いい感じの節分会だったのに~。
続いてきたものをやめるって、なんだか心細いものですね。
神社がやめるなら、今夜ますます頑張って大きな声出さないと!

旧暦カフェの後はなんだか毎回、
スッキリと晴れ晴れとした気持ちになります。

過去に深く潜ること、
記憶を反芻すること、
しっかり足元の自然と向き合うこと、
人々と集い分かちあうこと。
これが行事の効用かもしれませんね。

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旧暦カフェの後に何人かの方からお便りをいただきました。
記憶の蓋が開く。それも毎年繰り返す行事のいいところですね。
私の記憶。お母さんの記憶。おばあさんの記憶。もっともっと昔の記憶。。。。
繰り返すことで呼びもどし、重なり合い、こだまする。

下中菜穂

ワークショップ後のお便り
西村優子さんより
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昨日はこどもたちを私の実家に預けていたので、迎えにいった時に鹿児島出身の母に七草の話をきいたところ、鹿児島に独特の七草粥で7歳を祝う行事があるということでした。

「1月7日に7歳の子供が晴れ着をきて、7軒の家に器を持って周り、七草粥を少しずつ分けてもらいそれを食す。」

のだそうです。
これを『七草祝い』とい、七五三祝いとは別に行うものだけど、こちらの方がメインなのだそうで。

親は、事前にその七軒にはお願いしておくのだそうです。
うちの祖母は、その中にお餅をちぎって入れてたそうです!
https://www.fnn.jp/posts/2020010700000006KTS(参考リンク:FNN PRIME 鹿児島テレビ地域ニュース)

こんな話は今まで聞くこともなかったので、旧暦カフェのおかげです。

西村

ワークショップ後のお便り
佐藤小菜さんより
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〈音の節分〉で思い出したことが。
豆まきのバラバラ、豆を炒るザラザラ、とべらや柊を火に焼べたときのバチバチ。
七草叩きの音。
小さい頃。
しーんと静かな夜に、もぞもぞそわそわと何かが蠢くような不気味な気配を感じたとき、
わーー!っと大きな声を出して怖い気分を追い払っていました。
まだまだ冷たい土の中に、しっかりと硬い枝にも、たしかに春の始まりを感じる時期。
昔の人も、もぞもぞの不安から大きな音を出したのかもしれないなぁ、と。
季節の仕事や行事を誘い水に、私の記憶も湧き出してきました。
豆まきの夜は小さい菜っぱちゃんと一緒に、大きな声で怖いものを追い払おうと思います。いざ春を迎えに行かん!

佐藤


レポートご協力:
山口美登利さん
佐藤千佳子さん
西村優子さん